主の洗礼祭の日、氷の海に身を沈める敬虔な人々がいました
それは1月20日の朝でした。ウラジオストク在住の友人からこんなメールが届きました。
「昨晩1月19日は主の洗礼祭の日で、ウラジオストクでも多くの人々が凍った海に穴を開けて、洗礼を行いました。これはロシア正教の儀式のひとつで、毎年行われています」
友人はそのメールに何枚もの写真を添付して送ってくれました。その日の朝7時の気温がマイナス24度であることも教えてくれました。
AFP通信は、以下のように伝えています。
「ロシア・ウラジオストク(Vladivostok)で18日、ロシア正教の伝統行事「神現祭(Epiphany、主の洗礼祭)」に合わせて、信徒らが凍えるような寒さの中、冷たい水の中へと浸かる習わしが行われた。
この習わしは、イエス・キリスト(Jesus Christ)がヨルダン川(River Jordan)で洗礼を受けたことを祝福して行われているもので、疾病を遠ざけ、過ちを赦(ゆる)すと考えられている。(c)AFP」
氷張る水の中へ頭まで、ロシア正教の神現祭(2021年1月19日)
またロイター通信は、プーチン大統領が「神現祭(主の洗礼祭)」に参加したことを伝えています。
プーチン大統領、マイナス14度の極寒の中で沐浴(2021年1月20日)
主の洗礼祭(Богоявление 神現祭ともいう)は、イエスが30歳のとき、ヨルダン川でバプテストのヨハネによって洗礼を受けた日にあたります。その日、キリスト教世界では、神が人類の前に現れた日として記憶するために祝います。
カソリックでは「エピファニー(Epiphany 公現祭)」と呼ばれ、1月6日にあたりますが、ロシア正教ではクリスマスが1月7日になるのと同様に、2週間ほどタイムラグがあるため、1月19日になります。
ロシア正教の信者の人々は、主の洗礼祭の1週間ほど前に凍りついた池や湖に大きな穴を開け、大きな十字架を氷から切り出して、穴の前に立てます。ただし、ロシア正教では十字架といっても、カトリックとは違い、クロスした棒の下に斜めの棒が加えられた形をしています。
そして、ウラジオストクでは18日と19日の夜、信者たちは次々に氷の海に身を沈め、聖職者によって洗礼を施されました。こうして神に祈りを捧げることで魂が浄化されるといわれています。この日、信者たちは断食をします。さまざまな年代の人々がこれに参加し、赤ん坊を抱いて水に身を沈める母親もいます。
洗礼が行われた場所はネットで公開されています。たとえば、以下の記事では、ルースキー島にあるスヴャト=セラフィモフスキー僧院(Свято-Серафимовский мужской монастырь)やスポーツ湾にあるスイミングクラブ「フェデラツィヤ・ジムネヴォ・プラヴァニヤ・コサトカ=ドフ(Федерация зимнего плавания Косатка-ДВ)」、ヨットクラブ「パシフィックオーシャン(яхт-клуб “Тихий Океан)などが挙げられています。
※洗礼の場所を伝える記事はこちら。
友人が送ってくれた洗礼の場所もスポーツ湾の近くということですから、ヨットクラブで行われたものと思われます。
この厳寒の季節に行われることから、洗礼に参加するには「水に飛び込むこと」「事前の飲酒」「親の監督なしに子供が参加すること」などは禁止されています。
またすべての洗礼場所で、暖かいテントを備えており、そこで着替えることができます。医療専門家や救助隊、警察官、救急車は会場近くに待機しているそうです。
この時期に合わせて、ウラジオストクの沿海地方国立美術館では、1月20日から2月21日にかけて「16世紀~20世紀初頭のロシア美術」という企画展を行っていて、その展示の中に「主の洗礼」を描いた16世紀のイコンを展示しています。
ここに描かれているのは、バプテストのヨハネによってイエスが洗礼を受けている光景です。
※沿海地方国立美術館の情報はこちら。
ウラジオストクで行われる宗教行事は、ほかにもいろいろあります。本ニュースサイトではこれからもロシアの祭りや祝日のイベントなどを紹介していくつもりです。これらのことが、日本からこれほど近い場所で行われているのは、実に興味深いことではないでしょうか。
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