5月19日はピオネールの日、ソ連時代を懐かしむロシア人の気持ちを知る
先日、ウラジオストクの友人からこんな便りが届きました。
「5月19日は、ロシアではピオネールの日(День пионерии)といって、ソ連時代から続く子供たちのイベントがあります。私の家族も小学校に通う娘と一緒に祝いました」
便りを送ってくれたのは、現地で日本海ブリッジという旅行会社を経営しているウラジーミル・ルセンコさんです。彼と一緒にいるのが娘さんです。
その日、ウラジーミルさんの家族は郊外にある「ウサジバ・ヴァヴィロヴォ(Усадьба Вавилово)」というロシア様式の洋館を訪ねています。ここは庭園に囲まれた美しいお屋敷で、地元ロシア人の結婚式やお祝いのパーティ、演奏会、民族衣装の撮影会など、さまざまなイベントで使われているスポットです。多くの子供たちとその親たちが集まりました。
彼はピオネールの日のお祝いの様子を動画で送ってくれました。最初は庭園で男の子たちの合唱を親たちが聞いているだけでしたが、だんだん大人たちも一緒に歌い始めました。
ウラジーミルさんの奥さんや娘さんの短い動画もありました。ふたりは赤いスカーフを首に巻き、カメラに向かってにこやかに敬礼しています。これはどういうことなのでしょうか?
彼はピオネールの日について、以下のように説明してくれました。
「ピオネール(пионе́р)とは、ソ連時代に生まれた少年団のことで、「開拓者」(英語ではパイオニア)という意味があります。上位組織としてはコムソモール(Комсомол:いわゆる青年団の一種)があり、ピオネールの年代より小さな子供たちはオクチャブリャータ(Октябрята)と呼ばれました。直訳すると「十月の子」、すなわち「十月革命の子」という意味です。創立は1922年5月19日で、来年は100周年の創立記念日を祝うことになっています」
ピオネールというのは、いわばソ連版のボーイスカウトだそうです。彼の説明は続きます。
「ピオネールに参加する年齢は9歳から14歳が対象で、ソ連全土にある子供たちのための課外活動の施設として建てられたピオネール宮殿のレーニン像の前で宣誓文を読むという入団式がありました。
スローガンは「フシグダー・ガトーフ(Всегда готов)」。「備えよ常に!」という意味です。ピオネールのシンボルマークは、レーニンの横顔とピオネールのスローガンが描かれた赤い星と焚火の炎を組み合わせたものでした」
ピオネールについての説明はこちら→
「備えよ常に!――常に備えあり!」 – ロシア・ビヨンド (rbth.com)
ウラジーミルさんはこんな話もしてくれました。
「ピオネールに選ばれるためには、いくつかの条件がありました。学校の成績はもちろん、喧嘩をしない。礼儀正しい。社会奉仕に参加したり、老人の世話をするなど、子供たちにとってピオネールになることは誇らしいことでした。ですから、ぼくも当時はピオネールになれるよう努力していました。懐かしい思い出ですね」
これはウラジーミルさんが小学生のとき、ピオネールに選ばれた日に撮った記念写真だそうです。
「今日、ピオネールの日には、かつてのような政治的な意味はありません。大人たちはこの日が来ると、子供の頃を思い出して、心温まる気持ちになるのです。そして、自分の子供たちが同じようにピオネールに選ばれるのを祝うことがうれしいのです」
現在でもロシアではピオネールに選ばれた子供たちを記念撮影します。
この日は町中に赤いスカーフやたすき掛けをした子供たちの姿が多く見られます。
親たちは成長した子供の姿を見つめながら、愛おしく思う1日です。
「それから約1週間後の5月25日、『最後のベル』と呼ばれる子供たちの学校の終業式があります。ロシアでは小学校に入学する日は『最初のベル』、終業式は『最後のベル』といいます。高校を卒業する学年になると、このあと卒業試験を受けて、6月下旬に卒業式を迎えます。卒業試験の成績で大学入学が決まります」
ロシア学校で「最後のベル」が祝われる – Sputnik 日本 (sputniknews.com)
ロシアでは5月は卒業シーズンでもあるのですね。
ピオネールの日は、今日のロシア人がソ連時代をただ否定的に捉えるのではなく、むしろ郷愁を感じている一面があることがよくわかる1日といえそうです。
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