かつてシベリア横断鉄道の乗客が降り立ったナホトカのいまを訪ねる
ナホトカ(Находка)はウラジオストクから約90㎞東に位置するナホトカ湾(залив Находка)に面した美しい港町です。
1991年末にソ連邦が解体し、ロシア連邦が誕生する前までは、ウラジオストクは軍港という理由で対外開放していませんでした。ですから、それ以前にシベリア横断鉄道でヨーロッパに行く人たちは、横浜からの定期船で結ばれたナホトカから上陸し、鉄道に乗っていました。年配の日本人の中にはナホトカを訪れた人たちも多いかもしれません。日本国総領事館も当時はナホトカにあったのです。
とはいえ、現在では極東ロシアの中心都市はウラジオストクに移り、水産ビジネス関係の人たちを除くと、ナホトカを訪れる日本人は少ないといっていいでしょう。
では、いまナホトカはどんな様子なのでしょう。2019年10月、ウラジオストクからのナホトカ日帰り旅行に行ってきました。
ウラジオストクからは鉄道やバスで行くことができます。ただし、所要5~6時間とけっこう時間がかかります。ウラジオストク駅朝7時25分発のエレクトリーチカ(近郊列車)に乗りました。
ロシアの車両は日本に比べ幅広で客席はゆったりしています。問題は5時間以上の乗車時間をどうやってつぶすかですが、世界が交通網で結びつき、移動時間の短縮化が進む今日、気長に列車に揺られて旅するのも乙なものです(なにしろ成田ウラジオストク間はフライト2時間半なのに、その2倍かかるというわけです)。
終着駅のチホオケアンスカヤ駅(Тихоокеанская)に着いたのは12時半頃でした。
モスグリーンに塗られたかわいい駅舎です。
ナホトカはナホトカ湾に面した細長く弓状の町です。湾に沿ってナホトカ大通り(пр. Находкинский)が延びていて、市街地はチホオケアンスカヤ駅周辺に集中しています。
駅前がすぐ港です。そこはブフタ・ナホトカ(буфта Находка)と呼ばれる深い入り江になっていて、まさに天然の良港です。
駅の北側が高台になっていて、ロシア正教会が見えます。まずは訪ねてみましょう。
ナホトカのカザン教会は、町いちばんの高台で、港を見渡す絶好のロケーションに最近建てられたロシア聖堂です。
聖堂内は広く、数々のイコンや聖人たちの肖像画が飾られています。
この高台からはブフタ・ナホトカが一望にできます。
駅側を眺めると、たくさんの船舶が停泊している様子が見られます。
この町を訪ねたら、ぜひ行ってほしいのが、ナホトカ博物館(Музейно-Выставочный Центр Находка)です。場所は、駅からナホトカ大通りを西側に向かって5分ほど歩いた右手にあります。
博物館のに手前に、ナホトカの姉妹都市の小樽市や舞鶴市のレリーフが彫られたモニュメントがあります。
この博物館には、石器時代から現代に至る沿海地方とナホトカの歴史が展示されています。沿海地方の先住民族の衣装や8~9世紀にこの地に栄えた渤海王朝の展示などもあります。
先住民族のアート作品の展示などもあります。
実をいうと、ナホトカはシベリア抑留の日本人捕虜の収容施設があった場所のひとつで、当時の彼らの状況を伝える資料も展示されています。
当時の日本人捕虜の中には絵描きもいて、絵画が展示されていました。非常に興味深い作品ばかりですが、詳しくは別の機会にお伝えします。
館内は4年前にリニューアルされ、現代的な技術を駆使したビジュアル展示も多いです。展示解説用のタブレットの無料貸し出しも行っており、英語と一部日本語でも説明が見られます。
主な見どころはこれくらいです。ナホトカは人口14万人ほどで、ウラジオストクのような都会的な楽しみは少なそうですが、のんびり過ごすには気持ちのいい町です。食事を楽しめるレストランもいくつかあって、これも別の機会に紹介します。
さて、ウラジオストクへの帰りはバスを利用することにしました。バスターミナル(Автовокзал)は、博物館からナホトカ大通りを走る路線バスに乗って5~6分ほどです。たいていどの番号のバスに乗っても行けます。
ウラジオストクまでは鉄道と同じく所要4~5時間ですが、日中は30分おきくらいにバスが出ているので便利です。
鉄道が内陸を走るのと違い、バスは海岸線の通りに沿って走ります。
この港町の滞在を楽しみたければ、1泊することをお勧めします。
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