バレエダンサーの西田早希さんがウラジオストクで初の主役を演じました
ウラジオストク市民が待ちに待っていた第5回マリインスキー国際極東フェスティバルが9月6日に閉幕しました。
例年7月下旬に行われるこのイベントも、今年は新型コロナウイルスの影響で8月14日から9月6日までの開催となりましたが、期間中多くの公演が行われ、多くの市民が劇場に駆けつけました。
関係者によると「今年はコロナの影響で演目やキャストの変更があり、サンクトペテルブルクからのダンサーも事前に来ていた3人しか来られなかったため、ウラジオストクのダンサーと一緒に舞台をこなしました。こうしたなか、ヴァレリー・ゲルギエフはウラジオストクに来て指揮を振りました」そうです。
※ヴァレリー・ゲルギエフ/ロシアを代表する指揮者。サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場芸術総監督。日本公演も多数。
今回のフェスティバルでは、開催2日目の8月15日、『千夜一夜物語』の公演で日本人バレエダンサーの西田早希さんが主役のシェヘラザードを演じたことが話題となりました。
ウラジオストクのマリインスキーバレエ団に所属する彼女にとって、それは初めての大役であり、9月3日にも見事に演じています。
バレエ『千夜一夜物語』は、遠い昔のアラビアの国の美しく聡明な王妃シェヘラザードが心を病んだ国王に語って聞かせたさまざまな物語をまとめたもので、「アラジンと魔法のランプ」、「アリババと40人の盗賊」、「シンドバッドの冒険」などが広く知られています。
公演終了後、西田早希さんに話を聞きました。
―初の主演を終えて、いかがでしたか。
「これまで自分は主役をできるなどと思ったことはなく、ずっと夢見ていただけでしたが、今回実現できて本当にうれしいです。ありがとうございました。
リハーサル期間中は辛いことも多々あって、ストレスもありましたが、たくさんの応援をいただき、公演では自分でも驚くほど落ち着いて踊ることができました✨」
―コロナで日々のレッスンも大変だったと思いますが、どんな苦労がありましたか。
「3か月近く仕事が自粛期間となりました。公演やリハーサルがないと、ダンサーは身体がすぐに鈍ってしまいます。仕事が始まったときに怪我をしないよう、自粛中もシーズン中と同じように身体の状態を保っておくことが大事なのですが、それがいちばん大変でした」
―シェヘラザードを演じる際、心がけたことは何ですか? どんな気分で演じられましたか?
「私にとっては初めての主役で、テクニックもパートナリングもメンタル的にもとにかくすべてが大変だったのですが、まずは不安をなくすために、苦手なところや気になるところを何度も練習して、あまり考えなくてもできるように身体に叩き込むよう心がけました。
それからニュアンスや細かい部分を考えて改善しました。本番ではシェヘラザードを演じようとするのではなく、自分がシェヘラザード自身として舞台上で思いっきり踊ることに努めました。おかげさまで、自由に気分良く演じることができました」
―最近のウラジオストクの町の様子はどうですか?
「私自身は仕事が忙しかったので、劇場と家を行き来するだけであまり町には出ていなかったのですが、最近カフェやレストランも営業を再開し始めていて、天気のいい日の海辺は人で溢れかえっていました。以前は町も自粛ムードでしたが、少しずつコロナ前のように戻ってきています。
とはいえ、このフェスティバル中は劇場の観客席を1席ずつ空席にしてお客様を入れていました」
―今後のご自身の公演の予定や抱負をひとことください。
「フェスティバル最後の公演が終わったのち、今後2週間の公演が中止になったと発表されたので、今後の公演予定はしばらくわかりません。
抱負としては、目の前のことをひとつずつ真面目に取り組んでこなしていくことです。考えたことも、夢見たこともなかった主役を務められたのも、これまでの過程があってできたことだと思うので、また新たなチャレンジの機会が訪れるまで、やるべきことをひとつずつこなしていこうと思います」
どこまでも謙虚な西田早希さんですが、1日も早くウラジオストクを訪れ、劇場で彼女を応援する日が来ることを祈りたいと思います。
西田早希(にしだ・さき)
ウラジオストク・マリインスキーバレエ団所属。3歳からバレエを始め、16歳のときにサンクトペテルブルクの名門ワガノワ・バレエ学校に入学。卒業後はモスクワの劇場でデビュー。2016年にウラジオストク・マリインスキーバレエ団のエリダール・アリーエフ監督に誘われて来た。現在、ソリストとしてさまざまな役を演じ、活躍中。
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