ウラジオストクにもアールヌーヴォー建築がたくさんあります

アールヌーヴォー建築
お立ち寄りスポット

19世紀半ばに建設されたハバロフスクがアールヌーヴォーの町だったように、同じ時期に町ができたウラジオストクにも、アールヌーヴォー建築がたくさんあります。

今回も、ロシア各都市のアールヌーヴォー建築を紹介しているサイト「The Art Nouneau World」のウラジオストクのページを参照して散策を楽しみましょう。その多くはスヴェトランスカヤ通り沿いにあるので、ウラジオストク駅からスタートといきましょう。

The Art Nouveau World

まず駅前を走るアレウーツカヤ通りを右に歩きます。しばらくすると、国立沿海地方美術館があり、その通りの向かいのちょっとした高台の上に通称「ブリンナー・ハウス」があります。

Дом Бринера
ブリンナー・ハウス 1910年竣工
ул.Алеутская 15с2

ブリンナー・ハウス

パステル調の黄色に塗られた優美な建物で、アールヌーヴォー様式らしい幾何学的な装飾やタイル貼りのファサードが魅力的です。

ところで、ハリウッド大作『荒野の七人』(1960)の主演俳優ユル・ブリンナー(1920-1985)がウラジオストク生まれであることをご存知でしょうか?

実は、ブリンナー・ハウスは彼の生家で、その前に彼の銅像が建っています。2012年9月に開催されたアジア太平洋地域国際映画祭の開催時に建立されたものです。

ユル・ブリンナーの銅像

ユル・ブリンナーの祖父、ユーリ・イワノヴィッチ・ブリンナーはスイス人で、1880年にウラジオストクに渡って来ました。カムチャツカで漁業を始めたり、サハリンや北朝鮮で森林開発するなど、多くの事業に成功したようです。その頃建てたのが、この美しい邸宅でした。

その後、ロシア革命で彼ら一族はウラジオストクを離れ、この建物は極東船舶会社(FESCO)に引き継がれました。彼の母親はユダヤ系ロシア人で、祖父はウラジオストクに来る前、日本に滞在していたこともあるそうです。

『荒野の七人』は黒澤明監督の『七人の侍』をリスペクトして生まれたリメイク版ですが、黒澤の撮ったソ連映画『デウス・ウザーラ』の主人公アルセーニエフ(人類学者)の名を冠した博物館がウラジオストクにはあります。ユル・ブリンナーとウラジオストクの間にはそんな縁があるんです。

アレウーツカヤ通りをそのまま歩くと、スヴェトランスカヤ通りと交差し、右手に中央広場が広がります。広場に面したフィラルモニアコンサートホールの並びにある薄ピンク色の建物は「カッチャン・アパート」と呼ばれ、中国人商人のカッチャンが所有していたものです。現在は、2階に人気コーヒーショップの「カフェマ」が入店しています。

Доходный дом Катчана
カッチャン・アパート 1908年竣工
ул.Светланская 17

カッチャン・アパート

この建物の東側の地下にはウラジオストク駅から延びる鉄道の線路が敷かれているのですが、ちょっと面白い歴史があります。実は、いまのスヴェトランスカヤ通りは、下に線路を通すため、1909年頃、数メートル盛土して今日に至っています。この写真は工事中のものです。

1909年工事中の白黒写真

カッチャンは最初、1893年にこの土地にビルを建てたのですが、盛土のため1階が利用できなくなったので、建て替えをして、いまの姿になっています。

【参照】カッチャン・アパートの歴史に関する記事

そこからスヴェトランスカヤ通りを東に進むと、グム百貨店があります。ウラジオストクにおける最古の歴史的建築として文化遺産に指定されています。

Большой ГУМ
グム百貨店 1884年竣工
ул. Светланская 35

改装前のグム百貨店

1884年にクンスト&アルバースというドイツ人商人が建てたアールヌーヴォー建築で、最初は石造りの建物でしたが、1906年に再建されています。ロシア革命後、1934年に今日の名称「グム百貨店」となります。

2017年に大規模なリノベーションが行われ、1階は革命前、2階はソ連時代、3階はモダニズムとフロアごとに異なるデザインが施されています。2枚目の写真が改装後の外観です。きれいに磨かれ、明るくなりましたが、昔の渋い感じも悪くない気がします。

改装後のグム百貨店

【参照】グム百貨店のリノベーションに関する記事

さらにスヴェトランスカヤ通りを歩くと、ニコライ2世凱旋門が右手に見えてきますが、そのすぐ先に「科学アカデミー」があります。いかにもアールヌーヴォー的な遊び心のあふれるデザインで、見ているだけでも楽しくなります。

Академия наук
科学アカデミー 1914年竣工
ул.Светланская 50

科学アカデミー写真1

建設当初は建物の一部が映画館として使われていたようです。ソ連時代は「ソビキノ」と呼ばれていました。1923年からソ連科学アカデミー極東分校として使われ、今日はロシア科学アカデミーに受け継がれています。

科学アカデミー写真2

その先に進むと、頭上に巨大な金角湾大橋が見えてきます。すぐたもとにあるのが「ウンザコフ・アパート」と呼ばれる建物です。

Доходный дом Унжакова
ウンザコフ・アパート 1909年竣工
ул.Светланская 59

ウンザコフ・アパート

1907年にゴルバト・ボジェチコという建築家により建設が始まり、1909年に完成しています。植物柄の細かい装飾が散りばめられています。

ウンザコフ・アパートの装飾

金角湾大橋をくぐり、しばらく歩いてウラジオストク国際サーカスの少し先に「フィリチェンコ・アパート」という、これまた美しいパステル調のアールヌーヴォー建築が現れます。

Доходный дом Филипченко
フィリチェンコ・アパート 1910年竣工
ул.Светланская 111

フィリチェンコ・アパートのマスカロン

正面上部のファサードに女性の顔を象ったマスカロン(仮面飾り)が彫られ、周囲を渦巻きと花で装飾しています。曲線的なレリーフ(浮き彫り)がそれを取り囲み、典型的なアールヌーヴォー様式といえる半楕円系の窓と白塗りして縁取りされた愛らしい窓枠が目を引きます。一時、この建物も老朽化していたようですが、2000年代に修復されました。

The Art nouveau.worldのサイトには以下の建築も紹介されています。

  • бывш. магазин Чурина и Касьянова
    旧チューリン&カシャノフ商店 1916年竣工
    ул.Светланская 45
    ※ショッピングセンター「マールィ・グム」の隣にあります。
  • Дох. дома Синкевича и Фихмана
    シンケビッチ&フィッチマン 1912年竣工
    Пушкинская 33/1-4, 35
    ※プーシキン通りにあります。

ウラジオストクでは、このような歴史的な建築を保存する動きが始まっています。興味のある人は、以下のサイトを参照してください。

Vladivostok Travel Guide

ピックアップ

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。