6月になると、そろそろビーチとビールが恋しい季節になります
札幌と同じ緯度で、成田からのフライトはわずか2時間半。「日本にいちばん近いヨーロッパ」といわれるウラジオストクですが、いま頃は日本より一足早くビーチに繰り出す人たちの姿が見られることをご存知でしょうか。
昨年6月、本ニュースサイトでも以下のようなビーチの話題を提供しています。それから1年。時がたつのは早いものですね。今年もビーチの季節がやってきました。
北国ロシアで海水浴というのは意外に思えるかもしれません。広大な国土のうち、実際に国内でビーチライフが楽しめるのは、黒海沿岸か、極東ロシアの南端で日本海に面したウラジオストクくらいでしょう。
夏が短いぶん、ロシアの人たちは6月になると早くもビーチ沿いに寝そべって肌を焼いています。冬はマイナス10度を下回る厳寒の土地ながら、夏は日差しがけっこう強いのです。
この週末もビーチ沿いの通称「海辺通り」には、水辺の景色を眺めながら散歩する人たちであふれていました。ローラースケートを履いた子供たちが次々と行き交っていきます。周辺には、人気のジョージア料理店「スプラ」やシーフードレストラン、カフェもあり、海鮮BBQの屋台も軒を並べます。ランドマークは遊園地の観覧車で、近くには絶叫マシンもあり、若者たちの叫び声が遠くまで聞こえています。
夜になると、中央アジア風串焼きのシャシリクを出す屋台のビアバーが、ビーチ沿いの小道にオープンします。広場にはドラムセットを持ち込んでジャズやロックを歌うストリートミュージシャンも現れます。
ウラジオストクには、市街地だけでなく、手つかずの自然が残るルースキー島や小さな離島にもビーチがたくさんあり、車なら30分ほどで行けます。クルーザーで行く人もいます。この町の人たちの夏の週末の定番の過ごし方は、ビーチに出かけてバーベキューというものなのです。
さて、ビーチにつきものなのがビールでしょう。ロシア人はウォッカのような強い酒を好むというのは少し古い情報で、最近ではビールやワインなどのライトなお酒を好む人たちが増えています。
ウラジオストク出身でロシア語の翻訳や通訳を本業としながら、都内のロシア料理店でシェフも務めるというA.アレックスさんは次のように話します。
「もともとロシアではビールはお酒じゃないという感じもありましたが、健康志向もあってアルコール度数の高いウォッカよりライトなビールを楽しもうという気分が強まっています。ここ数年、地ビール製造工場や自家醸造のクラフトビールを出すレストランが現れていますね」
以前は値段が高くてもインポートものをありがたがる傾向があり、外で飲むなら外国ビールという感じだったロシア人たちも、さまざまな地ビールの飲み方を楽しむようになっています。「仕事のあとのまず一杯」という喉越しの快感を求める日本人とは少し違い、カクテルを飲み比べるような感覚であれこれ楽しんでいます。
ウラジオストクでは自家醸造のクラフトビールを出すレストランが増えています。そこではホップだけでなく、果実やベリーなどを使ったフルーティなビールもつくられています。
町のスーパーやリカーショップに行くと、日本と比べても遜色のない、あらゆる海外ブランドが棚にひしめくように並んでいます。ただし、インポートものは国産に比べ2倍くらいするので、せっかくですからロシアのビールを選ぶのがいいと思います。
極東ロシアにはハバロフスクにビール工場があります。1992年にサンクトペテルブルクで誕生した「バルチカビール」で、国内ナンバーワンのシェアで知られています。
「バルチカ(БАЛТИКА)」は「バルト海」の意味です。以下の0〜9番までの番号で味わいが分けられています。
#0 ノンアルコール
#2 ペール
#3 クラシック
#4 オリジナル
#6 ポーター
#7 エクスポート(輸出用)
#8 小麦のビール
#9 ストロング(アルコール度数が高め8%)
レストランやバー、カフェで飲める定番はバルチカ3 クラシック(度数は4.8%)で海外40カ国以上に輸出されているのがバルチカ7(5.4%)、ノンアルコールはバルチカ0です。バルチカ9はいちばんアルコール度数が高い8%です。飲み比べてみると面白いですね。
この工場は事前に旅行会社などを通じて予約すれば、見学や試飲が体験できる楽しい場所です。ここではバルチカ以外のビールもライセンス生産しています。
ウラジオストクでよく見かけるもうひとつの銘柄は「ゾラタヤボーチカ(ЗОЛОТАЯ БОЧКА)」で「黄金の樽」を意味しています。
ロシア語で「スヴェトロエ(明るい)」というさわやかテイストのものと、「クラシーチェスコエ(伝統)」というアルコール度数が少し高く、飲み応えのある味わいのものがあります。
この地方の地ビールとして有名なのは、タイガ(針葉樹林)に生息するトラをパッケージにあしらった「アムールタイガー」で、ライ麦を醸造した独特の風味とコクが特徴です。
面白いのは、もともとロシアではビールの量り売りをする店があり、そこで買ったビールをペットボトルに詰めて持ち帰るのが一般的だったことから、スーパーでペットボトル入りのビールを見かけます。
なんでもロシアでは2012年にビール用ペットボトル容器の使用が認められたというのです。ただし1.5リットル以下に制限され、その理由は容器が小さければ国民の飲酒量が減るためとされています。写真はハバロフスクのバルチカ工場でペットボトル入りのビールを製造しているところです。
もっとも、通常のボトルや缶入りのビールの賞味期限は1年ですが、ペットボトル入りは1カ月だそうです。まとめ買いはできなくても、酒飲みであればすぐに消費してしまうので、問題ないのでしょうね。
ウラジオストクのビール事情として、日本のアサヒが人気という話もあります。スーパーに行くと、ふつうに棚に並んでいます。ただし、先ほど述べたように、国産の2倍くらいします。
こんな話があります。モスクワからウラジオストクに出張に来たビジネスマンの間で「極東に来ると、日本の『スーパードライ』が飲めるので楽しみだ」と言われているそうです。モスクワではライセンス生産のものが多く、日本製の海外インポートものはめったに飲めないからだそうです。
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