ウラジオストクには昔、6000人近い日本人が暮らしていたことをご存知ですか?
ここ数年、日本からの観光客が増えていた極東ロシアのウラジオストクには、かつて多くの日本人が暮らしていたことをご存知でしょうか。日本からの近さを思えば、当然のことともいえますが、日本人は長らくその歴史を忘却していたと思います。
それは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのことでした。ウラジオストク市内には、当時の在留日本人の活動を物語るスポットがいくつも残っています。
HISウラジオストク支店では、こうした日本とのゆかりのスポットを案内するオンラインツアー「ウラジオストク旧日本人街 解説講座」を企画催行しています。同ツアーでは、現地日本語ガイドが事前に撮影した動画などを使い、以下のスポットを案内する内容です。
オケアンスキー通り・旧日本総領事館・旧朝鮮銀行・旧「浦潮日報」編集部→沿海地方国立アルセーニエフ博物館→旧日本人小学校→浦潮本願寺記念碑→与謝野晶子記念碑→プーシキンスカヤ通り、旧東洋学院→「ロシア柔道の祖」と呼ばれるワシリー・オシェプコフ氏の銅像
以下、これらのスポットと日本とのゆかりについて簡単に解説しましょう。
●オケアンスキー通り(ул.Океанский проспект)
この通りは港に面した中央広場からポクロフスキー教会のある丘に向かってまっすぐ伸びていて、通りに沿って以下の日本とのゆかりの場所があります。
●旧日本総領事館
この優美なクラシック建築がそうです。1916年に建てられた石造りのギリシア式建築で、現在は沿海地方裁判所となっています。
●旧朝鮮銀行
1919年、朝鮮銀行浦潮斯徳支店として開業。現在、現代アートギャラリーの「アルトエタージュ」があります。
●旧「浦潮日報」編集部
1917年12月9日に創刊された日本語新聞の編集部があった場所です。
●沿海地方国立アルセーニエフ博物館(Музей истории Дальнего Востока имени В.К. Арсеньева)
現在は博物館として使われていますが、1918年から22年までの間、旧横浜正金銀行として営業していました。
●旧日本人小学校
多くの日本人が暮らしていたので、子弟の教育のための日本人小学校もありました。1922年当時、生徒数は256人を数えたといいます。
●浦潮本願寺記念碑
ウラジオストクでの仏教の布教活動のため、1886年に開設されたのが浦潮本願寺でした。在留邦人の生活の支えや癒しの場所といえました。寺院は1915年に起工式が行われましたが、37年に閉鎖され、現在は碑が残るのみです。
記念碑は日ロ有志の協力で2000年に建立されています。
●与謝野晶子記念碑
1912年、ウラジオストク航路に接続する敦賀港〜新橋間を走る欧亜国際連絡列車の運転が始まりました。以降、日本からモスクワ、ヨーロッパへの鉄道がつながり、同じ年の5月、与謝野晶子が夫を追って、シベリア横断鉄道でパリを訪ねる際、この地に立ち寄っています。
現在、極東連邦大学東洋学院の建物の中庭に、この記念碑が建てられています。碑には「巴里の君へ逢ひに行く」という与謝野晶子のことばが刻まれています。
●プーシキンスカヤ通り(ул.Пушкинская)、旧東洋学院
当時は、ウラジオストクで身を立てようとした日本人だけでなく、多くの著名人が訪れています。たとえば、「日本近代小説の開祖」と称される、明治を代表する文人のひとり、二葉亭四迷です。彼は東京外国語学校でロシア語を学んだ後、1902年に一時ウラジオストクに滞在し、現地のロシア人と交流しました。
ウラジオストクには、1898年に中国語や日本語、モンゴル語、満州語、朝鮮語などを学べる極東で最初の高等教育機関である東洋学院が開校しています。ウラジオストクはロシアにおける東洋学の中心地でした。旧東洋学院の向かいには、プーシキン劇場と彼の銅像が立っています。
●ワシリー・オシェプコフ氏の銅像
ロシアにおける柔道発祥の地もウラジオストクでした。1911年に講道館に入門、帰国後、14年にこの地に柔道クラブを創設したサハリン出身のワシリー・オシェプコフが、「柔道の父」と呼ばれる嘉納治五郎と向き合う像が、金角湾大橋のたもとに立っています。
HISのオンラインツアー「ウラジオストク旧日本人街 解説講座」
配信日:
5月16日(日)14:00~
5月29日(土)11:00~
予約はこちら
ウラジオストクでは、市内のいくつかの場所に、当時の日本人の暮らしを物語る歴史を記述したプレートが設置されています。いまから100年前にこの地でロシア人と日本人が共生していた記録がしっかり刻みつけられていることを知っておきたいものです。
ウラジオストクと日本のゆかりについては以下のコラムを参照ください。
https://forbesjapan.com/articles/detail/24189
https://forbesjapan.com/articles/detail/24374
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